2018-01-01から1年間の記事一覧

第7話 入学式とその夜

Story So far ●御宿深丸とかいう主人公が、青葉志成バーチャル学園への入学を目前に控えている。彼は中学卒業後から高校入学までの儚いモラトリアムを悠々自適に過ごしながら、自分の代わりに学園に「通う」アバターの作成に成功した。 ●花原葉月とかいうバ…

第6話 懐疑

雑賀文太はどうしようもないほど憂鬱であった。 「はぁ〜〜」 教員室のディスクに肩肘をついて手を頰につけ、落ち込んだ様子でため息をついていた。 「ったく、本当に憂鬱だわ〜。地平線に浮かんだ太陽と土手道を歩く牛とのその使い手が思い浮かぶくらい憂鬱…

第5話 予感

藤枝道慈。深丸の担任のアバターは、平々凡々な三〇代前半男性そのものといった容姿だった。彼は瀬戸晴信に近づいた。 「瀬戸くん。急式先生が呼んでるよ。一緒に行こうか」 「その必要はない」 ピリッと張り詰めた声が聞こえたかと思うと、藤枝の背後から長…

第4話 スクリュードライバーってもはやカクテルの域を超えた言葉だよね

《こちらが食堂でございます!!》 「すげー……」 一旦ログアウトすることを告げた深丸が花原葉月に誘われ、通された場所は青葉志成学園の食堂であった。 一目見ただけで豪華絢爛だとわかる造り。 円卓から普通の長机までおおよそ400人は超える人数を収容でき…

第3話 アバター作り!

「青葉志成バーチャル学園 藤枝……道慈?」 「だれー? にいちゃんのしってるひと?」 勝手に触ろうとする幸太郎からひょい、と電子パッドを取り上げると、深丸は幸太郎を寝室に追いやった。 「知らない人だ、知らない人。俺くらいになるとよその秘密結社から…

第2話 メンテナンスに入りたい

「やりたいこと……か」 深丸は自分のベッド仰向けになり、天井をぼんやり見つめている。 「……やりたいことって言われてもなぁ」 15歳の深丸は思う。 俺には将来の夢だとか、志ってものがない、と。 今の生活で十分満足できているし、これ以上の幸せってものが…

第1話 御宿深丸とその周辺

コン。落としたペットボトルのフタが床のタイルをはねる音に、落とした藤枝道慈(ふじえだ・どうじ)自身がビクッと身体を震わせた。職場の同僚たちが帰ったあと、ずっとPC端末のデータファイルとにらめっこしていた。 藤枝は立ち上がると転がるフタを追いか…

小説『アバターくん、ちょっと学校行ってきて』新連載のお知らせ

こんにちは。ゴクツブシ米太郎です。 このたび、いがもっちとゴクツブシ米太郎の二人で新しい小説を書くことになりました。 最初は徹底的にアホなことやる小説でもいいなぁと思っていたのですが、 ちゃんと多少なりともテーマ性のある小説になりそうです。 …