ジャンプ型小説・ブログ集

週刊少年ジャンプみたく3人の著者が小説やブログを更新していきます。

ロストテクノロジーは誰のためにあるの 〜東都動乱篇〜 第2章 誰がために東都はある Part1

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「そうか、分かった。私から総隊長に伝えておく」

 学連警備団本局。鷹取シズク副隊長は部下から重大な情報を受け取った。「第三地区で紅叉アカシア月砂レゴリスの小競り合いが勃発した」というものだ。どうせ紅叉が好き勝手やっていたところを月砂が止めに入りいざこざになったに違いない。

 紅叉と月砂。霊気力、とりわけオーパーツ研究に執着する樋口研究所と丹羽研究所がそれぞれ擁する、東都研究都市における二大武装組織である。

 鷹取は『総隊長室』のプレートが付いたドアの前でぴたりと止まると、扉をノックして入室した。

 中世の西洋風な赤色の椅子にもたれ、優雅にティーカップをすすっている若い男に、鷹取は部下からの一報を告げた。

「吾妻総隊長。第三地区で紅叉と月砂が……」

「小競り合いをしている……だろ? ついさっき理七りななからそのことを聞いて、地区担当官の師崎もろざきに出動を要請した。それと、ちょうど君を呼ぼうとしていたところだ」

 身支度をしていた吾妻は、自分についてくるよう鷹取に言った。

「研究都市にネズミが紛れ込んでいる。牽制のため、俺たちも出るぞ」

「わかりました。それはいいのですが総隊長……」

 鷹取は不満をぶちまける。

「ティーカップでコーンポタージュを飲むのはやめてください。センスを疑います」

「うまいもんはうまい。合理的な考え方だろうが?」

 そんな会話を交わしながら二人が学連本局のロビーから出ると、三人の男女が待ち構えていた。

「向こうからわざわざお出でになるとは……」

 吾妻が敵意も露わに問いかける。

「前島さん。公安がこんなところに何の用だ?」

 前島まえじまたつのり警視はあっけらかんと答えた。

「もちろん、観光だ!」

「ふん、ばかばかしい……」吾妻は続ける。

「ここは自治権が認められた東都研究都市だ。あんたら公安が出る幕じゃない」

 日本に五つある研究都市は、一般社会と異なる仕組みで動いている。それぞれの研究都市には、霊気力を研究することを目的とするいくつかの研究所が存在し、研究都市のまつりごとの運営は、研究所が握っている。

 ここ、東都研究都市で設立当初から覇権を争っているのは、紅叉を有する樋口研究所と、月砂を有する丹羽研究所だ。主にこの二大研究所が、東都の自治を取り仕切っている。そして、二大研究所による行き過ぎた独断専行ならびに相互干渉を未然に防ぐため、「学連警備団」という、いわば自警組織が目を光らせているのだ。

 したがって、内政不干渉であるはずの東都を公安が訪問することなど、ほとんど前例のない事態だった。吾妻は不愉快そうに鼻を鳴らして、前島辰典の隣のスタイルのいい女性捜査官に話しかけた。

「なあ、前島さんが言ってることは嘘だろ?」

「うん、嘘だね」

 前島の部下、むらひめはタバコの煙を吐きながら、さらりと答えた。前島は蒲村を見つめ、がっかりした口調で言った。

「ちょっ、ヒメ、なんですぐばらしちゃうの! もうちょっとこうなんか、緊迫した駆け引きみたいなさぁ……」

 すると、蒲村は煙草を前島の頬にぐりぐり押し付けながら怒鳴った。

「うっとーしんだよ、このダメオヤジ! 駆け引きとか苦手のノータリンのくせして無駄に会話パート引き伸ばそうとしやがってコラァ!」

「あついあつい! ごめん、悪かった! オジサンが全部わるかった!」

「護、説明してやりなさい」

 蒲村は前島の左側に控えている男、一ノ瀬護いちのせまもるに言った。一ノ瀬は鋭い眼光を吾妻らに向け、話しはじめた。

「あなたがた学連もご存知と思いますが、最近の紅叉と月砂の活動は目に余るものがあります。あなたがたがこれ以上、彼らの行動を看過するのならば、我々、公安が東都の治安維持に介入せざるを得ない。今日は、その旨を通達するために参りました」

「言われなくても分かっています」

 鷹取が言い返す。

「紅叉の『紅叉王キング』も、月砂の『砂の女クイーン』も、今はまるで表に姿を現しませんが、現れたが最後、一網打尽にするつもりでいますから」 

 鷹取の言葉を受けて、吾妻が加勢する。

「東都は俺たちが守る。あんたら公安の出番はナシだ」

 言い返そうとする蒲村を、前島が遮る。

「まあまあ、ヒメよ。若いリーダーが自分なりに考えてこう言ってんだ。ここは信じてみようじゃないか。俺たちは退こう」

 吾妻が「そうしてくれるとありがたい」と応じて、きびすを返したそのとき、前島が吾妻を呼び止めた。吾妻は冷淡な口調で言う。「まだ何か用があるのか?」

 前島は深刻な表情で言った。

「お前たち、TEBESテベスという存在は知っているか?」

「ああ、大体のことはな。数年前から国家の転覆を目的として、世界中でテロだの何だの物騒な事件を起こしてる犯罪組織だろう。その規模も首謀者もいまだ謎らしいが」

「そうだ。これはまだ確証がないから言いたくなかったんだが……。TEBESが日本にも狙いをつけているかもしれなくてな」

「何だと?」

「TEBESの目的が国家の解体ならば、真っ先にターゲットとなるのはこの東都に違いない。紅叉や月砂への対応で手一杯のところにつけこまれたら、東都の自治がどうだなんて言ってられなくなるのは分かるな?」

 前島は今度こそ立ち去りながら、最後の台詞を放った。

 

「TEBESの連中はとてもじゃないが、お前たちの手には負えん。今回は見逃してやるが、TEBESが関わってるとはっきりしたら俺たちの出番だってこと、覚えとくんだぞ、若人よ」    

 

☆どんどん登場人物が増えていくので頑張ってついて来てください。完全な偶像劇なので登場人物は多いです。