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ジャンプ型小説・ブログ集

週刊少年ジャンプみたく3人の著者が小説やブログを更新していきます。

ロストテクノロジーは誰のためにあるの 〜東都動乱篇〜 第1章 コウと志乃 Part5

☆ついにロス誰1章ラストパートです。一人、夜風に当てがれながらコウが向かう先とは? 

 

 コウは白神研究所の裏の林を抜け、ぽつねんと立っているネコヤナギの木陰へ歩いていった。ひと気のないこの場所は、世間から切り離されて一人で考え事をするのにうってつけの場所だった。

 

 ところが、今夜は先客がいた。コウと同じくらいの年恰好の男が、木の根元に寝転んでいる。声をかけるのもためらわれて、コウは所在なく立ち尽くした。すると、コウの存在に気付いた青年が話しかけてきた。

「あれ、どちらさん?」

「いや……」

 見知らぬ人と通り一遍の会話を交わすのを面倒に思ったコウは、軽く頭を下げて立ち去ろうとした。ややあって、青年が訊いてくる。

「あ、もしかしてここ、君のお気に入りの場所だった?」

「……まあ、そんな感じっちゃそんな感じだな」

「それは悪かったね。じゃ、僕はもう行くよ」

 青年はゆっくりと腰を上げ、大きく伸びをして脱力する。どことなく締まりの無い顔だ。コウはそんな青年の顔をちらりと見て言った。

「ここ、俺の特等席ってわけじゃねぇよ。追い出すみたいで気分わりぃから、もうちょっといたらどうだ」

「あ、そう。じゃ、遠慮なく」

 青年はすとんと腰を下ろし、木の幹にもたれかかった。コウも、青年から数メートル離れたところにのろのろとあぐらをかいた。

 なんとも気詰まりな距離感。コウは心の中でため息をついた。

 関わりあいになってしまったからには、多少は世間話も交わすべきだろうか。一方、そんな義務感に駆られた会話を展開して何が面白いのか、という投げやりな気持ちもある。かといって、さっさと帰ってしまうのも後ろめたい気分だ。

「なんか、面倒だね。この感じ。初対面の二人がさ、こうしてさ」

 不意に青年が、コウと同じ思いを口にしたので、コウは驚いた。見ると、青年は眠そうな目で星空を眺めていた。コウは、青年につられて素直な言葉を吐き出した。

「ああ。面倒くせぇ」

「よかった。同じで」

 青年はそう言って、再び横になった。コウも草の上に身を倒した。

 それからしばらく、二人は黙って空を眺め、うつらうつらしていた。

 どうやら、青年も自分と同じ面倒くさがりの性格のようだ。面倒くさがりが二人集まると、こうも気楽に無言になれるんだなと知って、コウはくすぐったい気分だった。

 いつの間にか眠っていたらしい。目を開けると、空の端が明るくなっていた。コウは明け方の冷気に身震いし、くしゃみをした。すると、隣から青年の声がした。

「僕のほうが、少し早かったみたいだ」

「何が?」

「目を覚ますの」

「ああ、そう」

 心底どうでもいいと思った。でも、面倒くせぇ、とは感じなかった。

 青年はふふんと小さく笑った。

「いいね」

「何が?」

「君のそういう感じ」

「確かにな」

 コウの適当な答えに、青年はにやっと笑みを浮かべて立ち上がった。

「帰るよ、そろそろ。無断で出歩いたことがばれて、ボスに怒られると面倒だから」

 じゃあまた、と言って立ち去る青年に、コウは「おう」と軽く手を上げた。

 その直後、林のほうから自分の名を呼ぶ声がした。志乃の声だ。コウが身を起こすと、林の中から眠そうな志乃が姿を現した。

「おはよー。昨晩はどこ行ってたの?」

「別に。ずっとここにいた」

 コウは志乃と並んで歩き出す。志乃がコウの顔を覗き込んで訊いてきた。

「コウくん、なんかいいことあった?」

「は?」

「いや、ちょっと清々しいような顔してるなーと思って。仏頂面がスタンダードのコウくんにしては珍しいな、って」

 コウは顔をそむけて言った。

「別に何もねーよ。さっきちょっと、面倒くせぇ奴に会っちまっただけだ」

 

☆否が応でも自分の進路先について考えなければならない大学3年生。「自分のやりたいことは何なのか?」と言う答えに詰まる人続出。「やりたいことがある」っていうのは叶わないとしても幸せなことなのかもしれませんね。