ジャンプ型小説・ブログ集

週刊少年ジャンプみたく3人の著者が小説やブログを更新していきます。

ロストテクノロジーは誰のためにあるの 〜東都動乱篇〜 第1章 コウと志乃 Part2


「どひゃー、ホントにこのオンボロ小屋で合ってるんだよね?」

 志乃はボロボロの研究所を見上げ、たいへん失礼な独り言を吐いた。インターフォンを鳴らしたが、応答の気配はない。ドアノブに手をかけたが、鍵がかかっていなかった。

「誰かいますかー? 入っちゃっていいですかー?」

 志乃はドアを開けた。玄関から廊下にかけて、古書や得体の知れない考古物のたぐいがぎっしり並んでいる。

 建物の内部に沈殿した、古い紙の匂いが鼻腔をこそこそとくすぐってくる。

「うはー、こういう匂いキライじゃないんだよねー」

 志乃が目を閉じて匂いに浸りながら歩いていると、足が古書にひっかかった。古書の山が崩れ落ちて、志乃は絶叫する。

「うにょええええ」

 あたりに舞い散る埃にむせこみながら、志乃が古書の山から這い出ようと手を伸ばすと、ビリッと紙の裂ける音がした。見ると、志乃が手をついた勢いで、開いた本のページが破れていた。

「や、やばい」

 志乃が証拠隠滅をはかるべきか否か迷っていると、突然、二階で爆発音がして、何かが階段を転がり落ちてきた。

 それは四十歳くらいのおじさんだった。全身すすまみれのおじさんは、這いつくばったままの志乃と目が合うと、「ハロー」と気さくに挨拶した。

「いやー、なんというか古典的な登場の仕方ですまない。学会が近いもんでね、焦って少々ムリな実験に手を染めてしまったようだ。おかげで大失敗だ」

「それはたいへんお気の毒でございますでございますね~」

 志乃は冷や汗を垂らしながら、上の空で答えた。彼女は目下のところ、破れた本を隠そうと必死だったのだ。

 しかし、すすまみれのおじさんは目ざとくそれを発見した。そして顔色がみるみる青ざめていく。

「君ィ、何をしてくれたんだ! それ、水島さんから借りた、めちゃくちゃ大事な研究書なんだよ。終わった……。僕の研究者生活は終わったよ。絶対水島さんに殺される。セメント樽に詰め込まれて太平洋に流される」

「水島さんってもしかして、中央図書館の司書のおじさんのことですか? あの人、そんな物騒には見えなかったけど」

「バカを言うんじゃないよ」

 すすまみれのおじさんは、近くに水島さんがいるわけでもないのに声を低めて話す。

「確かに普段は温厚だけどね、本のこととなると鬼のように厳しいんだから、あの人は。……というか、君、水島さんの知り合い?」

「知り合いってわけじゃないんですけど……」

 志乃がそう言いかけたとき、玄関のドアが開いて志乃と同年代の男女四人が現れた。

 ほっそりとした黒髪の女性が、目の前の光景に呆然として言った。

「所長、ただいま帰りましたけど……何してるんですか?」

 

 

☆本日、少年野球チームの練習に参加し、ベーランでぶっこけたO氏です。体が心についていかない人の気持ちがようやくわかりました☆