ジャンプ型小説・ブログ集

週刊少年ジャンプみたく3人の著者が小説やブログを更新していきます。

ロストテクノロジーは誰のためにあるの 〜東都動乱篇〜 第1章 コウと志乃 Part1

「考古科学」――それが二〇四〇年代より、科学技術の目覚ましい進歩で発達した学問であった。世界各国は軍拡競争のため、核エネルギー以上の潜在的な力を持つとされる「オーパーツ」の研究に明け暮れていた。日本も例外ではなく、九年前、東都研究都市が誕生したのを皮切りに、考古科学を研究する五つの研究都市ができあがった。

 日本国家によって特別認定された五つの考古科学研究都市には、研究員の他に、職員、学生、労働者、その家族が居住している。また、大学のように自治が認められており、司法・政治等の不介入はもちろんのこと、独自の法律を持つことも可能だ。

 

 そして2049年10月。

 

 綾崎志乃あやさきしのは東都中央図書館の地下書庫にいた。

 さすがは東都一の蔵書量をほこる図書館。地下書庫はまるで迷路のように入り組んでいて、電動式移動棚には、考古文献が息をひそめて並んでいる。ふだん図書館に行くことのない志乃にとって、この光景は壮観だった。

「何かお探しですか」

 背後から声がして志乃が振り向くと、初老の男性が近くの書棚を整理しながら、志乃に微笑みかけてきた。

「あーいやいや、ちょっと見とれてただけです。あははーそれではさらば」

 志乃はそう答えて、いそいそと立ち去ろうとした。

「もしや、白塔について知りたいのではありませんか?」

 男の声が追いかけてきて、志乃は足を止めた。

「なんで分かったんですか? もしやあなた超能力者? それともストーカーさん? 変態紳士?」

男はにこやかな笑顔のまま、話を続ける。

「変態じゃありません、司書です。だから分かるんです。この地下書庫で、あなたのような表情で本を探している方は十中八九、白塔について知りたいと思っておられるのです。それも、興味本位ではなく真剣に」

「私のような表情で?」

 私どんな顔してたんだろ、と考えると、なんだか恥ずかしくなって志乃は顔を赤らめた。

 初老の男は本を整理する手を止めて、言った。

「恥ずかしがることはありませんよ。だいぶ昔の評論家ですがね、小林秀雄という人がこんなことを言っています。『解釈を拒絶して動じないものだけが美しい』、と。人間の知的探求の行き着く先はそこなんじゃないかと、私は思います」

「何か知ってるんですか? 白塔のこととか」

 志乃の問いに、司書は首を横に振った。

「あなたにこの世界の様々なことを教えるには、私より適任の人がいます。このメモを持って、その人を訪ねてごらんなさい」

 司書の男性は、胸ポケットから出したメモ帳に何かを書きつけて、志乃に手渡した。

志乃はメモを見た。少し縒れた紙の中心に書いてあったのは――

「白神考古科学研究所? あのー、これっていったい……」

 志乃が尋ねようと顔を上げると、司書の姿は忽然と消えていた。

 

 地下書庫からの帰り際、志乃は、豪華な装丁に身を包んだ一冊の本を何気なく手に取り、パラパラとめくった。

 とある一文が目を引いた。

「人生とは選択の連続である」

 一度は聞いたことのあるフレーズ。

 今の自分にぴったりの言葉だ。

 でもこの言葉はいささか非情だと思う。私たちの身に起こることのいくらかは、私たちがそれに否応なく巻き込まれるという運命的な要素をもっている。それすらも自身の「選択」として片付けてしまうのはあまりにも虚しい。

「まーいいや。さっそく白神考古科学研究所いってみよーっと」

 

  志乃は本を閉じて元の場所へ返すと、図書館をあとにした。

 

☆主人公はこの綾崎志乃と虚西コウとのダブルで行きます。そういえば虚西コウくんは今回出なかったですね☆