Story So far ●御宿深丸とかいう主人公が、青葉志成バーチャル学園への入学を目前に控えている。彼は中学卒業後から高校入学までの儚いモラトリアムを悠々自適に過ごしながら、自分の代わりに学園に「通う」アバターの作成に成功した。 ●花原葉月とかいうバ…
雑賀文太はどうしようもないほど憂鬱であった。 「はぁ〜〜」 教員室のディスクに肩肘をついて手を頰につけ、落ち込んだ様子でため息をついていた。 「ったく、本当に憂鬱だわ〜。地平線に浮かんだ太陽と土手道を歩く牛とのその使い手が思い浮かぶくらい憂鬱…
藤枝道慈。深丸の担任のアバターは、平々凡々な三〇代前半男性そのものといった容姿だった。彼は瀬戸晴信に近づいた。 「瀬戸くん。急式先生が呼んでるよ。一緒に行こうか」 「その必要はない」 ピリッと張り詰めた声が聞こえたかと思うと、藤枝の背後から長…
《こちらが食堂でございます!!》 「すげー……」 一旦ログアウトすることを告げた深丸が花原葉月に誘われ、通された場所は青葉志成学園の食堂であった。 一目見ただけで豪華絢爛だとわかる造り。 円卓から普通の長机までおおよそ400人は超える人数を収容でき…
「青葉志成バーチャル学園 藤枝……道慈?」 「だれー? にいちゃんのしってるひと?」 勝手に触ろうとする幸太郎からひょい、と電子パッドを取り上げると、深丸は幸太郎を寝室に追いやった。 「知らない人だ、知らない人。俺くらいになるとよその秘密結社から…
「やりたいこと……か」 深丸は自分のベッド仰向けになり、天井をぼんやり見つめている。 「……やりたいことって言われてもなぁ」 15歳の深丸は思う。 俺には将来の夢だとか、志ってものがない、と。 今の生活で十分満足できているし、これ以上の幸せってものが…
コン。落としたペットボトルのフタが床のタイルをはねる音に、落とした藤枝道慈(ふじえだ・どうじ)自身がビクッと身体を震わせた。職場の同僚たちが帰ったあと、ずっとPC端末のデータファイルとにらめっこしていた。 藤枝は立ち上がると転がるフタを追いか…
こんにちは。ゴクツブシ米太郎です。 このたび、いがもっちとゴクツブシ米太郎の二人で新しい小説を書くことになりました。 最初は徹底的にアホなことやる小説でもいいなぁと思っていたのですが、 ちゃんと多少なりともテーマ性のある小説になりそうです。 …
●高校生まで広島県で暮らしていたゴクツブシ米太郎が、身勝手ながら懐かしさに浸りながら、広島の風景を書き起こします。 いきなり愚痴をこぼすのも無粋なことだけれど、広島駅って、見た目があまりパッとしない。遠くから眺めると、これが中国地方一の都市…
●前回は、中世・近代において、人びとが「旅」/「旅行」に自由の表現を見出してきた、というふうなことを書きました。今回はそれに引き続いて、じゃあその「旅」/「旅行」の自由って何? ということについて書きます。「旅行論」完結編です。 PART2の最…
●「旅」、「旅行」という言葉の語源と、古代における「旅」のイメージを追った前回に引き続きまして、今回は中世・近代の「旅」のイメージを膨らませていきます。 中世に至ってようやく人は旅する自由を手に入れます。『旅の思想史』によると、中世ヨーロッ…
ニーチェ? ゴクツブシ:ニーチェ※1読んでるの? いがもっち:ニーチェはちょっとかじっただけ笑 そんなに読んでない笑 ニーチェもたくさん本出しとるけど、とりあえず『善悪の彼岸』は完全に読んでみたいねぇ。……そう言えば、ツァラ……あれ、なんだっけ? …
こんにちは。ゴクツブシ米太郎です。一時の悪ノリで左のようなよくわからないペンネームをつけてしまったけれど、どうせなら「観音寺」とか「榊原」のような憧れのかっこいい苗字をつければよかった。観音寺米太郎。そこはかとなく漂う小坊主臭が素敵。 【1…
【挨拶】こんにちは。ゴクツブシ米太郎です。この記事は、今後の連載に関するお知らせです。それ以上でもそれ以下でもなく、そういう意味ではホンマにジャスタウェイみたいな存在感を放つということがこの記事の特徴なのだといえるでしょう。 【お断り】突然…